今回は、「出版で成功する人の3つのポイント」 をお伝えする予定でしたが、 あいまにふわっとしたコラムを入れさせていただこうと思います。「ふわっと」と言いながら、「真面目かい!」と突っ込まれる内容になりますが、ごめんなさい。
さて、何かを決断する時、必ずと言ってよいほど逃れられない別の決断を迫られるものです。それは、“ 今日と同じ明日を拒否するという決断” になるからです。
「なんで、転職したの?」はじめて転職したとき、会う人会う人に聞かれた言葉です。そう投げかけられるのには、理由が2つあって、新卒から14年半在籍し、営業現場のリーダシップを任され、書店に行けば、どこどこの出版社の桜井ではなく、桜井がいる出版社というポジションに変わっていたほど全国を飛び回っていたし、楽しかったし、人間関係でつまずいたわけでも、会社が嫌いになったわけでも、条件が悪かったわけでもなかったから。そして、年齢が37歳という転職にはかなり不利な歳でもあったから。それから転職回数5回、現在6社目となるClover出版にいる。なんでClove出版にきたかは後ほどに。
話しを戻すと、特別な理由や目的がない限り、35歳を超えての転職はかなりリスクが伴うから極力やめた方がよいと他人には言っています(笑) じゃあ、なぜ転職をしたのか?ある程度のキャリアを積み、順風満帆な安全な生活を得るのが目的なら転職する必要がなかった。しかも、はじめにいた出版社は、これまで在籍してきた会社の中で思い入れが強く、大好きな会社のままなのだ。しかし、順風満帆な安全な生活が怖くなった。このまま安泰な道を歩み続けては自分が腐ると考えた。夢は、人生の晩年、死ぬまで青少年の育成、教育に貢献する自分でありたいと思っているから。育成も教育も、教える側、指導する側で決まる。人間として器を広げ、知見を広げ、もっともっと苦労しなければ必ず悔いを残す。悔いほど怖いものはないと考えた。また、出版営業の限界を知ったのもあった。所詮、営業は編集が本を作くらなければ仕事にならず、著者と編集の思いを知らなければ出版の醍醐味、社会貢献の在り方さえ曖昧で、仕事をつまらなくする怖さもあった。だから決断した。失敗が9割だと覚悟した。
しかし、失敗する確率が高いからと転職を拒み、昨日と同じ今日を、今日と同じ明日を生きることの方が怖くなった。そうだ、もっと沢山の一流人に触れていかねばならない。人をもっと知らなければならない。ビジネスを学ばなければならない。見たことがない世界を、勇気ある行動で選ぶ決断を体験せずして、青少年に対してチャレンジの連続でもある人生を自信もって語れないと考え、出版プロデュース・出版コンサルティングで業界トップのポジションにあると考えた会社に転職した。そこを転機に、5回の転職をする過程において、経験したことのない苦難、自信を失いかけるほどのたくさんの現実との格闘、自分の弱さとの格闘を体験してきた。
初めて転職した出版プロデュース・コンサルティング会社で得た知識や経験は、人生に大きな影響を与えたと思っている。人生は腹をくくって決断した数だけ深みを増し、広がりを増す。決めるというより、腹をくくるという感覚。また、そこで得た業界トップのマーケッター思考、著者をプロデュースする職人芸、業界トップの編集者やベストセラー作家との出会い、様々な業界で活躍されているビジネスパーソンとの出会いも含めて付き合う人たちが激変したのは、金額に換算できない価値を自分に与えた。出版営業21年のキャリアと並行して、出版プロデュース、セミナー講演、ライティング指導、原稿整理、コンサルティング契約、時にはライターのような仕事まで兼務できているのも、あのときに転職していなければあり得ない世界だ。やってみてはじめて分かることも多い。編集業務をしていると、編集の大変さ、有り難さが身に染みる。ライターの凄さ、著者をプロデュースする凄さ等、一冊の本をつくるのに色々な方が携わり、その大変さや有難さも分かってくる。
生きていること自体、勝ったようなものだ。できるからやるんじゃなくて。やりたいからやる!という選択が悔いを残さない。腹をくくるくらい覚悟を必要とする場面なんて滅多にないです。もちろん、待っていても時はやってきません。自分がそうだと決めた時が、その時なんですよね。